副業やフリーランスとして業務委託案件を受けていると、「この作業を一部外注してもいいのだろうか」「誰かに手伝ってもらうのは契約違反にならないのか」と不安になることがあります。こうした場面で重要になるのが、「再委託」という考え方です。
再委託は、必ずしも禁止されているものではありませんが、無条件で認められるものでもありません。本記事では、副業・フリーランスの立場から、業務委託契約と再委託の基本的な考え方を整理し、判断の軸を提示します。
業務委託契約における再委託とは
再委託とは、業務委託契約で引き受けた業務の全部または一部を、第三者に委託することを指します。
例えば、企業からマーケティング支援の業務委託を受けた個人が、資料作成やリサーチの一部を別のフリーランスに依頼するケースが該当します。
ポイントは、再委託を行っても、元の発注者に対する責任は最初に契約した受託者が負うという点です。再委託先がミスをした場合でも、発注者との関係では受託者が責任を問われるのが原則です。
請負契約と準委任契約の違い

業務委託契約は、大きく以下の2種類に分けられます。
| 契約形態 | 内容の特徴 |
|---|---|
| 請負契約 | 成果物の完成が目的 |
| 準委任契約 | 業務を行うプロセス自体が目的 |
請負契約では「成果物」が重視されるため、誰が作業するかは問われにくく、再委託が認められやすい傾向があります。一方、準委任契約では「受託者本人の業務遂行」が前提となるため、再委託は制限されやすくなります。
ただし、これはあくまで一般論であり、実務では次に説明する「契約書の内容」が最も重要です。
再委託できるかどうかは契約書次第
再委託の可否は、法律の原則よりも契約書の記載内容が優先されます。契約書には、以下のようなパターンがあります。
- 再委託を全面的に禁止している
- 事前承諾を条件に再委託を認めている
- 一部業務に限って再委託を認めている
- 再委託について特に触れていない
再委託に関する条文がある場合は、その内容に従う必要があります。一方で、明確な記載がない場合でも、「当然に再委託してよい」と判断するのは危険です。発注者が「本人が対応する前提」で契約しているケースも多いため、事前確認が無難です。
なぜ再委託が問題になりやすいのか
発注者が再委託を制限する理由は、主に以下の点にあります。
- 品質の担保
スキルや経験を見て特定の個人に依頼しているため、別の人が対応すると品質が変わる可能性があります。 - 情報管理・セキュリティ
社外秘情報や顧客情報を扱う業務では、再委託による情報漏えいリスクが懸念されます。 - 責任の所在
トラブル発生時に、誰がどこまで責任を負うのかが分かりにくくなります。
これらの理由から、再委託そのものを禁止、または厳しく制限する企業は少なくありません。
無断で再委託した場合のリスク
契約で再委託が禁止されている、または承諾が必要とされているにもかかわらず、無断で再委託した場合、以下のようなリスクがあります。
- 契約違反として契約解除される
- 損害賠償を請求される可能性がある
- 継続案件や次回案件が打ち切られる
- クライアントとの信頼関係が大きく損なわれる
短期的には業務が回ったとしても、長期的に見ると副業・フリーランスとしての信用を失うリスクが高い行為だと言えます。
副業・フリーランスが再委託を考えるときの実務的な視点

再委託は、必ずしも避けるべきものではありません。ただし、以下の視点を持つことが重要です。
- 契約書に再委託に関する条文があるかを必ず確認する
- 再委託が必要になりそうな場合は、早めに相談する
- 「忙しいから」という理由だけで進めない
- 再委託せずに業務量や納期を調整できないか検討する
特に副業の場合、本業とのバランスが崩れやすいため、最初から「一人で完結できる範囲か」を見極めて受注することも重要です。
まとめ
業務委託契約における再委託は、原則論ではなく契約書と発注者の意向で決まるものです。副業・フリーランスとして安定的に仕事を続けるためには、「できるかどうか」ではなく、「してよい前提なのか」を確認する姿勢が欠かせません。
再委託を検討する場面では、契約内容を確認し、必要に応じて事前に相談する。この基本を押さえておくことが、トラブルを避ける最も現実的な方法と言えるでしょう。






